4%ルールをグラフで理解する!おすすめFIREシミュレーター

FIREムーブメントのためにリタイア後の資産の動きをシミュレーションしてくれるサイトは、FIREというニッチなトピックの割には意外とあります。そんな中、今回は僕が特に気に入っているシミュレーターを紹介したいと思います。

engaging-data.comというサイトにある「Post-Retirement Calculator」というシミュレーターです!
これはリタイア後の資産の動きを試算しその結果を図で捉えられるようにしたもので、4%ルールが実際にはどう働くかを図示することで視覚的に理解できるようにしたものです。1875年から2019年にわたるアメリカの株式市場や、国債、そしてインフレ等の数値を使用しています。以下から実際にシミュレーションを試してみましょう。

4%ルールとは、投資資産(分散されたインデックスファンド)から年間4%を使っても基本的には資産が底をつきないというルールのことです。このルールに従うからこそ、年間支出の25倍を投資資産として貯めることで、それ以上働かなくても一生お金に困らないで生きていけるのです。この経済的独立(Financial Independence )という状態を目指す人々の一連の動きをFIREムーブメントと呼び、アメリカを主体とし少しづつ注目が広がっています。

リタイア時の投資資産の4%の額を毎年引き出して使った場合は60年間の成功率が約85%
engaging-data.comより

ここでは4%ルールに従って、投資資産5000万円から毎年200万円を使っていくことにします。(インフレに合わせて金額は毎年調整されます。分かりやすくするために1ドル100円での計算です。)
FIREでの早期退職なので、35歳から60年間リタイア期間があると想定しましょう。以前の記事で紹介した Early Retirement Now(以下ERN)の研究の通り、退職期間が長期に渡る場合には、株式として保有する資産の割合が高い方が成功確率が高くなりますので、Stockを100%として、後は0%にします。Investment feesとはインデックスファンドにかかる管理費用等を指しますが、ここは一旦デフォルトの0.3%にしておきます。さらに今回はDeathのトグルを外しておきましょう。

上記の設定でシミュレーションをしてみると、最後の年である95歳時点では14.5%の確率でbroke(お金が全くない状態)となっていることがわかります。つまり、4%ルールの60年間での成功率は約85%と、ERNの研究 (89%) と同様の結果となりました。しかも約83%の割合で資産は最終的に元々の金額より増えていて、65%においては資産が元の5倍以上(=2億5千万円以上)に増えているというのは驚きですね。ただ、約15%の確率で失敗してしまうとしたらやはり少し不安に感じる人もいるかもしれません。

より低い引き出し率で資産をしてみよう:3.5%と3.25%の場合

そこで今度はERNが推奨している3.5%、3.25%の引き出し率を確認してみましょう。

3.5%の引き出し率とすると成功率は約98%に
engaging-data.comより

3.5%にすると失敗する確率は2.2%になりました…わお。いきなりすごいジャンプですね。

次に3.25%にしてみると…成功率100%!なるほど、ここまで下げれば歴史的には安全ということですね。ERNがおすすめしているのも納得です。

引き出し率を3.25%まで低くすると成功率は100%に
engaging-data.comより

年金や少額の収入を想定すると4%も悪くはない

さて、ここまでの結果からすると、やはり退職期間が僕のように長期にわたるのであれば4%ではなく、3.5%や3.25%を目指して資産形成をした方がよいということにはなります。ただし、それは早期退職後に一切お金を稼がないという前提においての話です。メインの仕事を辞めた後にもなんらかの形で収入を得ると仮定すると試算はどう見えてくるのでしょうか。

まず試算に入れるべきだと思うのが年金の存在です。年金は昨今制度維持の問題等で騒がれていますが、全くなくなるというのも現実的ではないのかなというのが僕の正直な所の考えです。以前の記事で書いたように、65歳から夫婦二人で年間100万円を貰えると想定して試算してみましょう。Extra incomeの箇所に100万円分入力し、歳は65歳から95歳までとします。

4%の引き出し率で65歳から100万円を年金で
もらえると仮定すると、成功率は一気に高くなる
engaging-data.comより

上記の結果の通り、控えめに見積もった年金額をプラスすると、4%の引き出し率の失敗する確率は4.5%まで下がりました。これだけでも元の計算よりだいぶ明るい結果になりましたね。

続いてリタイアした35歳から50歳までの期間で何かしらの形で収入を得た場合を想定してみましょう。額は少なめに年間50万円としましょうか。僕らの場合は二人でこの金額なので、一人当たり25万円と学生のバイトもよりも少ない額です。

4%の引き出し率だが、35歳から15年間
年50万円の収入がある仮定では成功率98%となる
engaging-data.comより

結果はなんと…失敗率が2.2%までに下がりました。成功率約98%です。これならだいぶ安全なプランと言えそうです。

さらに上記の年金と収入をどちらも入力して試算してみると…成功率100%!3.25%の引き出し率と同じ結果を出すことができました。(Extra incomeとそれに対応する歳の枠の中に、数字をセミコロン;で区切って入力すると複数の数値を入れることができます)

4%の引き出し率だが、15年間
年50万円の収入がある仮定では成功率98%となる
engaging-data.comより

いかがでしょう?これぐらいの収入と年金なら、割と現実味がある試算ではないでしょうか?4%ルールはそのまま適用してしまうと30年を越えるリタイア期間には少し不安かもしれませんが、年金を受給できる可能性や、早期退職後にもギグワークや自分の好きなことで少額でもお金を稼ぐことを計画に入れることによってより堅牢な成功率を導き出せるという結果となりました。

どこまでお金を貯めればEnough!と思えるかが大切

逆に言えば、3.25%の引き出し率を達成できるぐらいの資産形成(年間支出の約31倍)を達成してしまえば、リタイア後に収入を得ることなんてほとんど考えなくてよいという試算となっており、人によってはこちらの方が気楽でよいかもしれません。僕らの場合はそれは元々のゴールである25倍の資産を貯めた後、さらに2-3年長く働くことを意味します。その時点での株式市場の動向や、職場の環境次第では全然ありかなとも思っています。

もちろん今回紹介したシミュレーターも、4%ルールのベースになっている研究も、結局は過去の米国市場等のデータに基づくものであり、今後も同じ結果を期待できるかどうかは確実ではありません。これからの株式市場のリターンはこれまでの歴史的な水準には及ばず、将来の安全な引き出し率(Safe Withdrawal Rate)は2.2%だ!なんて試算をしてみた人もいます。(そのうち別記事で触れようと思います。)

恐怖は売れる(Fear sells. )とはよく言ったもので、こういう悲観的な話を耳にするとやっぱりもっと貯めた方がいいかなあと思ってしまったりすることもあります。ただ、冷静に考えると2.2%の引き出し率を可能にするためには4%の時の倍近く働かなくてはならないのです。若く健康であろう時の人生をそこまで犠牲にしなくても…とも思います。最後に今回の試算では外していた、あのDeathトグルを戻してみましょう。

Deathトグルをオンにしてみると、年齢を重ねるにつれ
死亡している確率も着実に上昇する様が確認できる
engaging-data.comより

ご覧の通り、自分が死亡してしまった場合の部分が灰色になっています。もちろんこれはアメリカの平均寿命を使っているので、日本ではもう少し死亡率は低いとは思いますが、イメージは伝わると思います。やはり高齢に向かっていくにつれもう生きていない可能性も上がっていくわけで、いかに自分が健康でいるうちに満足のいく生き方をできるかが大事なのかなと感じるわけです。

皆さんも設定を色々ご自分に合うように調整してみて試算をしてみてください。このように結果を図として認識しておくことでより資産の変動の様子を具体的にイメージできるようになり、非常におすすめです!

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