【FIREケーススタディ】34歳で1億円以上を貯め早期退職したプログラマーの話【Mad Fientist】

FIREケーススタディ

FIREムーブメントの考え方や方法論を紹介している本ブログ、FIRE in Japan。
僕ら夫婦二人は30代半ばでのFIREを目指し貯蓄/資産形成に励み、その過程を綴っていますが、
既にFIREを実際に達成した人はどんな人生を送っているんだろう?という問いに具体的に答えるために、FIRE達成後の暮らしをコミュニティのメンバーに個別に焦点を当てて紹介していく記事を書いていくことにしました。

名付けて「FIREケーススタディ」。シリーズ化して様々なFIREコミュニティの人々の生き方を参考に僕らが学べることを考えていきたいと思います。

Mad Fientist

FIREケーススタディ、記念すべき第一号はMad FientistのBrandonです!
彼はMad Fientistという、海外のFIRE ムーブメントの コミュニティでは必ずと言っていいほどオススメされるブログとポッドキャストを運営している米国人です。

ブログMad Fientistのメインページ
まるで研究室かのような遊び心のあるデザイン

ポッドキャストではMr. Money Mustacheを始めとするさまざまなFIREコミュニティのメンバーにインタビューをし、FIREの様々なテーマについて話しててとても興味深いです。ブログの方ではFI達成のためのスプレッドシートを公開していたり、FIREのための節税策をかなり深掘りして記事にしていたりと役立つ情報が盛りだくさんです。特にRoth conversion ladderと呼ばれる、日本で言う確定拠出年金(401k)を60歳になる前に引き出せる方法を広めた功績で知られています。

大学ではComputer Scienceを学び、FIRE前はプログラマーとしてWebアプリやソフトウェアを開発する仕事をしていたそうです。現在は眼科医の妻と共に夫婦二人でスコットランドのエディンバラに暮らすBrandon。そんな彼のFIRE達成までの道のりを年表にまとめてみました。

Brandonは、仕事自体が嫌いなのではないと語っていて、事実FIRE前にしていたプログラマーの仕事は全く悪いものではなかったと振り返っています。彼がそれでもFIREを選んだのは、自分が個人としてクリエイティブに生きることをとても大切に思っていて、やはり結局は誰かの指示で誰かのために誰かの仕事をやらなくてはならないという生き方をずっとしていくことはできない、と決意したからだそうです。

Brandonの年収と年間支出は?

彼は個人的なエピソードを具体的な数字を伴っては公開していないため、FIRE前の年収や支出はだいぶ曖昧にしか把握することができません。しかし、米国でプログラマーという高給を稼げる職種(年収1千万円も珍しくありません)についていたこと、妻のJillの職業はこれまた高給であろう眼科医で共働きということで、世帯収入はかなりのものであったのではないかと想像されます。

こちらのBusiness Insiderの記事に載っている下記の表を見る限りでは、FIRE後の夫婦二人での出費は年間にして日本円で500万円ぐらいのようです。4%ルールに基づくと、500万円の25倍が Financial Independence(経済的自由)の数字ですので、最低でも 資産は1億2500万円相当は保有しているはずです。

FIRE後の生活を送る中でBrandonが学んだこととは?

Mad FIentistのポッドキャストの中ではFIRE後に学んだことを1年ごとにまとめてくれていて、現在3年目の学びまで公開されています。実際にFIRE後の生活を送ってみた人でないと気づけない様な、洞察力に溢れた教訓が語られています。下記にリンクをまとめます。

Valuable Lessons from My First Year of Freedom

Valuable Lessons from My Second Year of Freedom

Valuable Lessons from My Third Year of Freedom

特に1年目を振り返ったポッドキャストは僕がFIREを知って間もない頃に聞いていて、強烈に記憶に残っています。FIREを達成した人の最初の感動が伝わってきて非常にワクワクしたのをよく覚えていますね。その中から一番気に入っている発言はこれです。

Have you ever woke up thinking it was Sunday morning but it was actually Saturday instead?
It was like that but 1,000 times better because it wasn’t just an extra day off that you didn’t expect but the rest of your life!

Mad Fientist Valuable Lessons from My First Year of Freedom より

FIREとは、「日曜日だと思って起きたら土曜日だった時」の感覚を1,000倍良くしたものだと。僕がFIRE実現に向けて行動する一歩を踏み出す原動力となった言葉です。

彼のブログやポッドキャストでの発言を聞いたりして特に重要だと思った考えは以下の2点でした。

1 . 何かから逃げるためにFIREするのではなく、何かをやるためにFIREをしたほうがいい

FIRE from somethingというより、FIRE to something という心構えであった方がいいということをBrandonは説いています。つまり、仕事が嫌だからという理由だけで早期退職に踏み切らない方がいいということですね。

一年目を振り返ったポッドキャストでも言っていますが、FIREで早期退職をした後でも、彼は自身のブログといったように没入できるプロジェクトを持っていたために、いつもとあまり変わらないスケジュールで生活することができたため、FIRE前後でいきなり生活パターンが激変し精神的なバランスが崩れることを避けることができたようです。

もちろん労働そのものを嫌ってる人もいるでしょうし、人にもよるのかもしれませんが、ある程度自分が生産的なことをしていると思えるための活動を考えておくことは精神衛生上良いのかもしれません。怠惰な生活をひたすら送るというのは最初の一、二か月はこの上なく愉快なことかもしれませんが、それがあと60年も続いていくとしたらおそらく僕はうんざりしてしまうと思います。

このブログもそうですが、何かしらクリエイティブな活動に勤しむための手立てを考えておこうと思います。別にお金を稼ぐこととかに結びつける必要はなく、自分が情熱を持って取り組める趣味を見つけるでも十分良いと思います。

Brandonの面白いところは、Mad Fientist というFIREムーブメントのコミュニティの中では絶大な支持を誇るブログを持ちながらも、FIRE後は自分がもっと情熱を持てることに取り組んでいるところです。パーソナルトレーナーまで雇ってジムでの運動に励んだり、この記事にもあるように元々興味のあったシンセサイザーに本気で取り組み、ビジネス化を目指したり、自分のオリジナルアルバムの作成を目標としているようです。ただの「FIREの人」だけで終わりたくないという姿勢は見習えるものがあると思います。

2. FIREすなわち幸せとは限らない

Brandonが32歳でFinancial Independence(経済的自由)を達成する直前の期間は、彼はとりわけFIを達成すること自体に夢中になっていたと振り返っています。その時期はひたすらに支出を切り詰めることで如何に貯蓄率を増やすことに専念し、仕事の傍らに修士課程に取り組んだり、ブログにも精を出していたりと、お金の面でも時間の面でも根を詰めた生活を送っていた様でした。

そんな最中で彼の投資資産は Financial Independenceの目標額に届いた様ですが、Brandonはその瞬間には特に何も心境の変化がなかったと述べています。逆にこの時期はあらゆることに手を出しすぎ、さらに収入の70%を投資に回すため、贅沢な消費はほとんどしていなかったということで、精神的に余裕がなく妻との関係もギクシャクしてしまっていたとか。一番の大きな達成であるはずのFIも苦い思い出になってしまっているようですね。(このあたりの心境はFrugalwoodsという別のブログにBrandonが寄せた記事に詳しく書かれています。)

そんな経験を踏まえてBrandonが語っているのは、仕事を理由にあれができないだとか、「仕事さえなければ幸せを感じることができるのに」と信じ込みすぎてしまうことの危険性です。そういう人はもしかしたら仕事以外に何か解決すべき問題を抱えているかもしれない。今の生き方に満足がいかないのを仕事のせいにしてしまうのは簡単ですが、そんな場合には仮に Financial Independenceを達成し、労働からは解放されたとしても、結局新たな問題と直接対峙しなければならなくだけであると語っていました。

もちろんストレスの多い仕事をしている人々にとって、 Financial Independenceを達成し労働から解放されて一切何も心理的な変化がないかというと、そんなことはないでしょう。ただ、やはりそれだけが全てでないということは念頭に置いておくのが重要ですね。FIにとらわれすぎて、あらゆるものを犠牲にしてお金だけひたすらに貯めているだけではもったいないということでしょうか。特に僕らの場合はFIまで10年間と短いとは言えない期間の労働が待っていますので、この間をなんとか楽しめる様な生き方を構築していくのが必要でしょうね。このFIRE達成までの時間のことはよく「Boring Middle(退屈な途上)」と呼ばれていますが、この中間地点を如何に楽しめる様にするのかが持続性のあるFIREを実行する上で大事ということですね。

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