FIREムーブメントの目的である早期リタイアを決行してから気になる費用の一つが国民年金保険料です。
国民年金とは、収入に関係なく月約1万6千円/年間19万7千円を20歳から40年間払い続けることで、月に約6万5千円、年間約78万円を65歳から受給ができるという仕組みです。一方で、収入が低い等の理由があればこの保険料を免除してもらえる規定があり、全額免除で40年間を過ごすと、半額の年間約39万円を受給することができます。
以前の記事の検討事項としても国民年金について触れていますが、真面目に払うとしたら一人年間約20万円の出費増になりますので結構深刻なトピックです。ただ、年金を一つの投資として考えるのならば、保険料は費用ではなくインデックスファンドから他の投資商品に資産を移管しているというふうに捉えることも可能かなとは思いますが、直感的にはやはりインデックスファンドよりは損するのではないかと考えています。今回はそんな疑問に回答すべく試算を行い、僕のようなFIREによってかなり早い時期での早期退職を企てている者が国民年金という問題にどう向き合えば良いのかを考えてみたいと思います。
投資か年金か? どちらがお得なのか試算してみた
前提条件は以下の通りです。
前提1. 大学卒業後35歳までは一般の企業で働いているため、その間は年金を全額払っている。(もちろん厚生年金は国民年金より掛け金も高いため、将来受給できる額もその分多いはずですが、今回は計算を簡略化するために20歳から35歳までの期間は国民年金を満額払ったという前提にします。)
前提2. 35歳で早期退職をしてからは、国民年金に切り替わるが、保険料を払うかどうかは
免除した場合とどちらが経済的であるのかを考慮してから決める。免除されることを決めた場合には、国民年金保険料になるはずだった金額は全て米国を中心とする高度に分散されたインデックスファンドへ投資され、長期的な平均として年間5%の利益をもたらすと仮定する。
以上の前提で計算をしていきましょう。
まず、35歳までは満額を払ってきたという前提なので、年金を納めなければならない40年の内の15年間分、率にすると37.5%は既に受給できることになります。つまり、78万円×0.375=¥292,538 約30万円はこの時点で既に受け取れることが確定しているということになります。
さらに国民年金はこの時点から全額を払えば年間¥487,563を追加で受給できますが、全額免除を受けても半額の¥243,781は受け取ることができます。つまり、もうあと半分の¥243,781を得るために保険料を支払うことが、経済的に見てお得かどうかという問いになります。
年間24万円を受け取れるというのはというのは、4%ルールに従うと600万円を投資資産として保有することと同様の意味を持ちますので、インデックスファンドへ投資した場合と年金を払った場合の比較をしてみようと思います。
35歳から60歳までの25年間、真面目に全額を支払うとすると年間197,412円×25=¥4,935,300となり、ほぼ500万円かかります。このお金をインデックスファンドへの投資に回し、前提通り25年間で年率5%の利益を得ることができたとすると、25年後には下の表の通り¥9,892,997までに増加します。額面で見るとほとんど倍の差がありますね。

25年目以降は新たに資本投入はせず
純粋な年5%の成長だけと仮定
ここで考えたいのはこのインデックスファンドの資産がもたらす額です。35歳の早期退職から25年経った60歳の時点では、資産は¥9,892,997となっていますが、年金を受給できるのは今のところ65歳からのため、その分さらに5年間資産が増える可能性があります。5%の成長で12,626,250円です。4%ルールに従ってこの投資資産から毎年4%を引き出していくとすると、年間¥505,050を使うことができることとなります。4%はちょっと強気すぎると言って3.5%を適用する(以前の記事で触れました)としても、¥441,919です。
結果として、年金を真面目にしっかり払った場合のほうが、年間約20万円から25万円の損をするということになりました。これは年金を受け取る期間を30年間とすると、600万円~750万円の損です。

年間約26万円多く使えるという試算に
やっぱり年金は納めない方がいい?
やはり国民年金保険料は免除を受けた方がお得であるという結果となってしまいました。ただ、個人的に年金を数字だけで簡単に払わないという判断ができるかというと正直微妙なところであり、倫理的な観点からやはり払ったほうが良いのではという良心の呵責もあります。
ポジティブに捉えるなら、年金受給は一応確実な収入源であり、株式市場が歴史上類を見ないほどの低成長や大恐慌にさらされてしまった場合には、リスクヘッジとしての効果も期待ができます(受給額減額やマクロ経済スライドなんていうトピックも聞こえてきますが、年金制度自体が全くの0になることはまずないのではないでしょうか、もしそんなことが起こるような事態になっていたとしたら、早期退職なんかを心配するよりも深刻なことが起こっているかもしれません。)
ということで、今のところは年金保険料は「払っておこうかな」ぐらいのスタンスにしておきます。まだ早期退職するまで10年近くありますしね。