FIREムーブメントの哲学を知りたかったらこの本を読もう!Your money or your life(邦題:お金か人生か)

FIREムーブメントに関するおすすめの本

FIREムーブメントに関する本は近年色々出ていますが、僕としては下記にあげる三冊をお勧めします。

  • ウォール街のランダムウォーカー
  • A simple path to wealth
  • Your money or your life

今回はこの中から「Your money or your life」という本を紹介します。

FIREムーブメントのバイブル的存在?

この本はVicki Robinという人が1992年に初版を著した、FI(Financial Independence)に関するマインドセットを説く本です。FIREのコミュニティでは頻繁に話題にでてくる本であり、最近知名度が上がりだしたFIREムーブメントの起源とも言える一冊でしょう。

この本は9つのステップで経済的に独立するための具体的な方法やお金に対する持つべき姿勢について提示しています。アメリカ特有の401K等が話題になることはあまりなく、日本でも再現性の高い方法論を説いていると思います。

つい最近(2021年5月)にようやく日本語訳が出版されたようです。邦題は「お金か人生か」。なんともストレートな訳ですが、FIREの考え方が日本に浸透してきた一つの証ですね!

お金とは?あなたの本当の時給はいくらですか?

実際的な Financial Independence のための計画も重要ですが、やはりこの本の真価は
お金=生命エネルギー(Life Force)とするその哲学でしょう。なんだかこんな表現をすると怪しい雰囲気もでてきますが、多くのサラリーマンが自分の限られた時間と体力を犠牲にして給料を得ていると考えるなら、こういう見方は妥当かなとも思います。

消費されゆくモノと時間とお金とを天秤にかけ、自分の人生を選択し生きることを訴えるこの本はまさにFIREムーブメントの聖書的な役割を持つといえます。

もっと具体的なところでこの本に登場する面白い考え方は、自分の本当の時給を計算しようとする試みです。そもそも労働時間はよくある1日8時間週40時間ではなく、通退勤にかかる時間、朝起きてから仕事へ行く準備をする時間、そして帰宅してから仕事モードをオフにするまでにかかる時間等も仕事さえなければ他のことにあてられるはずだったということで、仕事の時間へ組み入れるべきだということです。

肝心の給与でさえも、実際の手取りを見て喜んでいいわけではなく、仕事のためにかかる諸経費を引いて考えるべきだとのこと。例えば仕事場に相応しいとされるスーツも、プロフェッショナルに見えるためのカバンも靴も、仕事をしてなければ買う必要のないもので会社から支給されないものは全てこの諸経費に含まれます。昼ご飯も忙しいスケジュールの中自分で作らずに外で食べているのならば、それもまた仕事に関連した経費であるとのこと。さらに仕事のストレスから解放されるためのアルコール、タバコ、頑張った自分へのご褒美、その他エンターテイメント、はたまた休暇の時に行く旅行でさえ諸経費に織り込むべきだといいます。日本の労働環境に適用するならば職場への旅行のお土産であるとか飲み会の費用も計上しなければというところでしょうか。

このように労働時間、実際の給料を計算し直すと、本当の時給というのは労働契約書に書いてあるものからだいぶ少ないことがわかります。

ここからがさらに面白いのですが、自分が消費するもの、つまりお金を支払い買うもの全てをこの本当の時給で割れば、そのモノを購入するためには何時間自分の人生を犠牲にしなければならないのかを知ることができます。その上で自分がどう生きたいのかを選択しようという眼を覚ませてくれるメッセージをこの本から感じます。

自分の中の物差しを持ち、他人に見せびらかすためだけに物を所有することを見直し、自分が本当に満足できているのかという疑問をあらゆる消費の瞬間において念頭に置くということ。意識的な消費をしようというメッセージですね。
人が物を所有することによって得られる幸福感はあるところで頂点に達し、その後は費用に見合うだけの満足を得ることは難しくなるとも説いています。どこまでで充分なのか、どれだけ消費をすれば自分は満足するのかというのを真剣に考えて、More is better という考えを捨てるべきだと著者は言います。ここは今のFIREの考えにそのまま繋がっていますね。

Workとは?働くことだけが人生ではない

そしてさらにもう一つ、仕事もしくは働くこと(Work)に関しての洞察も面白いです。Workは産業革命前に宗教が担っていた役割を代替しているようだと筆者は述べています。

“Who am I?” and “Why am I here?” and “What’s it all for?”

Your money or your lifeより抜粋

もしお金を稼ぐ必要無かったらあなたは何をしたいですか?このコンセプトを真面目に考えることを著者は勧めています。そう考えると今の仕事は本当にやりたいこととは程遠いかもしれません。最近流行りのコンマリ風に言うと「ときめかない」というやつでしょうか。

しかし逆にそれはいい機会です。普段の仕事は生活するお金を稼ぐ手段と考え、情熱をより傾けることのできる趣味でも活動のための資金調達法だと捉えることができる。つまり自分の人生と仕事を割り切ることで、精神的に仕事に入れ込み過ぎる不健康なマインドセットから抜け出せる。まさにライフワークバランスというものでしょう。

FIREを目指すことを決めたならば、普通の仕事を続けなければならない期間はもうすでにわかっています。以前の記事で述べたように僕の場合は10-12年、人によっては20年かかるかもしれません。これらの時間は決して短いものではありませんが、普通とされてきた終身雇用での35-40年の勤続年数からすれば「ゴールが見えている」という点で救いがあります。そして、この10年程度の働かなければならない期間をいかに楽しむかが大事なのだとこの本は教えてくれます。どう楽しむかはまたそれぞれありますが、もうどうせ数年で終わりが来るのであれば、出世を意識せず、自分が大事だと思う仕事の在り方を目指してみたり、または自分が興味ある職業にいっそFIREする前に挑戦してしまってもいいかもしれません。もし結局自分が思い描いたような良い仕事ではなかった場合でも、数年で「卒業」できるのですから。

まとめ


以上、お金と働くことについて、それぞれYour money or your life で書かれているポイントを紹介しました。

自分の本当の時給、つまり価値を知ることで、自分が何にお金を使うべきなのかを改めて考える。その上で今の仕事が自分の人生の全てではないということを理解し、「より良く」生きるための選択をよく考える。 FIREムーブメントの根幹を為す哲学を説くこの本が1992年には存在してたとは驚きです。