4%ルールは現在でも成り立つのか?アーリーリタイアを本気で考える

働かないで生きていくための4%ルール

4%ルールとは、投資資産(分散されたインデックスファンド)から年間4%を使っても資産が底をつきないというルールのことです。このルールに従うからこそ、年間支出の25倍の金額を投資資産として持てばもう働かなくても生きていける(経済的独立Financial Independence)ことになります。まさにFIREムーブメントの柱となっている理論です。しかし、この4%ルールには下記の通り2つの懸念事項があります。

・懸念1 4%ルールが実証された研究は1994年、または1998年のものであること

・懸念2  4%ルールの前提として想定されている退職期間は 30年間であること

1つ目についてですが、僕が以前の記事で紹介したTrinity Studyは1998年に公開された研究です。その当時から現在までには2000年代前半のドットコムバブル、そしてあのリーマンショックと大きく市場が動いた出来事がありました。そしてその逆にここ数年の市場の上昇には目を見張るものがあります。このようなここ20年間の市場の動向は4%ルールにどれほどの影響を及ぼすのか?最近の研究を調べてみました。

そして二点目ですが、前回の4%ルールに対する誤解の記事において、4%ルールに従えば永久に資産が尽きることは無いというのは間違いであると書きました。4%ルールはもともと伝統的なリタイア年数を生き残るためのルールであり、30年間資産が0にならなければ成功と定義されています。しかし、FIREを目指す者の退職期間は30年では収まりません。僕は35歳で仕事を辞めようと計画しているため、年数はもしかしたら60年に渡るかもしれません。30年で成功率96%の4%ルールは2倍の期間でどうなるのか、ちょうどいい研究があるので紹介します。

4%ルールを現在に適用するとどうなるのか?

一つ目の懸念、4%ルールが今なお通用するのかという問いについて、まずはTrinity Studyの筆者自身による回答を見てみましょう。

上に挙げた表はTrinity Studyの筆者らが2011年に発表したフォローアップの研究の結果です。前提としては1926年ー2009年までのS&P500のインデックスと、社債が使用されています。想定の退職期間は最長30年間です。肝心の4%の引き出し率では、株式:社債が75:25の割合の際になんと100%の確率で成功するというデータになっています。2009年までのデータならもともとのTrinity Studyを上回る数字が出ています。

もっと最近の検証結果についても触れておきましょう。Wade Pfauという研究者も2018年にTrinity Studyのフォローアップを行なっています。2017年までのデータを扱っているので、かなり最近の市場での4%ルールの行方を知ることができます。

この研究の前提としては1926年から2017年までのS&P及びアメリカ国債を使用。株式:国債の割合が75:25の場合において、4%ルールは30年間では98%、40年では成功率は92%となっています。本研究は40年間と少し長めのスパンも検証していますが、30年に比べたら下がるもののなかなか悪くない数字だと思います。

以上二つの研究を参照してみましたが、30年間のスパンにおいてはどちらも元々のTrinity Studyと変わらない成功率を算出しています。今のところは4%ルールは現代でも十分に成り立つと考えてよいでしょう。

60年間の退職期間がある場合も4%ルールに頼って大丈夫?

2つ目の懸念点である、より長い期間での退職を想定した際4%ルールが生き残れるかを見てみましょう。 Early Retirement Nowというサイトに丁度良い研究があります。60年間までの長い期間を想定した2016年の研究です。1871年から2016年と非常に長いスパンにおけるS&P500とアメリカ国債のデータを使っているのも特筆すべき点でしょう。

4%の引き出し率だと、株式に投資資産の100%を割り当てることで、89%の確率で60年間経っても資金が尽きることはないという結果になりました。

早期退職のことを考えて、従来の研究の30年よりも長いスパンを検証してくれるこのサイトは非常に貴重です。60年もの退職期間を考える必要があるのかは人によるかもしれませんが、このように表にしてみるとやはり30年の期間より成功率は低くなります。面白いのは30年間ではインデックスとBondの割合が75:25の時に1番安全だったのに対し、60年になると100%インデックスへ投資するのが1番いいということです。結局長期で見るとEquityを持つというのが最もリターンを生み出してくれるということなのでしょう。

4%ルールは10%の確率で失敗してしまう!と嘆く前に

さて、肝心な60年での成功率はインデックス100%投資で89%と示されています。30年ではほぼ100%近い成功率を叩き出せる4%ルールでも、やはり期間が長くなるに従ってガタがでてきてしまうということですね。10%の確率で資産は底をつき、早期退職は失敗してしまうということです。

Early Retirement Nowを運営しているBig ERNのように、一般的に受け入れられている理論に疑いの目を向けて検証してくれる賢い人がいるのは実に有難いことです。4%ルールを信じるのもいいですが、盲目的に鉄壁の法則だと思い込んでFIREしてしまうのは非常に危険です。

この研究をどう受容するのかは人それぞれのリスクへの許容度にもよりますが、僕は割にこれをポジティブに考えています。そもそも90%の確率で成功するというのは数字で考えても安全な賭けだと言えるでしょう。元々4%の引き出し率というのはだいぶ保守的にみた数字であり、4.25%使ってしまっても85%は問題がなく60年を過ごすことができることがこの研究からもわかります。

フレキシブルに生きるのがカギ

それでもやっぱり失敗するのが怖いですか?気持ちはわかります。けどもし早期退職後に4%の引き出しを続けることができないとわかったらどうしますか?そのまま何もせずに資産が年々枯渇していくのを見送るのでしょうか?僕ならそんなことはせずに、お金を稼ぎに出るでしょう。別に嫌なフルタイムの仕事に戻らなければならないわけじゃありません。年間の支出の4分の一でも稼ぎ出せたら、引き出し率は3%に落ち、あなたの計画の堅牢性は急激にあがります。年間支出が200万円だったら稼ぐ必要がある金額は50万円です。学生のアルバイトですら容易に生み出せる金額ですよね。ですので僕はやはり4%ルールを基準としてセミリタイアします。セミリタイアと言っているのは必要な時にはまだお金を稼ぐ意思があるということです。なんでも柔軟に対応するのが1番ですからね。

 

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