4%ルールに対するありがちな3つの誤解 あなたのFIREのための投資手法は本当にそれで大丈夫ですか?

4%ルールとは何か

4%ルールとは、簡単に言えばリタイア後に投資資産の4%を毎年引き出して使っても大丈夫という理論のことで、FIREを可能にする基盤となる考え方のことです。この理論を信じるからこそ、年間支出の25倍の金額を貯めれば早期退職も可能だと言われているのです。

なお、この4%ルールについては以前の記事で紹介しているので参考にしてください!( じゃあ一体いくら貯めればもう仕事しなくても生きていけるの? 4%ルールとは

4%ルールは、1994年のWilliam Bengenによる研究、そして1998年のTrinity Studyにより確立された理論であり、現在でも通用することがその後のフォローアップで確認されています。(一部懐疑的な見方をする人もいますが、その辺りも含めた4%ルールの現在での受容のされ方とその変遷は別記事で書こうと思います。)

一旦FIREのトリガーをきり、仕事を一切しないで投資資産だけで生きていくと決めたら、あなたが頼りにできるのは4%ルールだけです。つまりこのルールをしっかり理解することは致命的です。4%ルールはまさにFIREのための命綱のような存在なのです。

それなのに、FIREを目指す人の中には4%ルールの内容を勘違いしてしまっている方が多く見受けられるような気がします。情報の少ない日本のみならず、アメリカのFIREコミュニティでも誤った情報が散見されます。今回の記事ではその中でも特に多い勘違いを3つまとめてみました。

誤解1 投資資産はどんな種類のものでも大丈夫

FIREを実現する!と意気込んでいる人の投資計画をみてみると、不動産への投資であったり、高配当株で配当で4%を得るだとか、あるいは個別銘柄に「投資」をするのが作戦だったりします。僕はこれらの手法を試すことをダメだと言っているわけではないですが、これらの投資手法をとると、4%ルールとは前提が全く変わってしまうということを忘れてはなりません。4%ルールは以前の記事で紹介したように、資産の75%をアメリカの株式市場全体に投資することを前提にして成り立っています。これを実現するには、S&P500の指標であったり、楽天バンガード全米株式インデックスといった、広範に分散されたインデックスファンドへ投資するのが最も効率が良いでしょう。                                                                                                

誤解2 4%引き出しても大丈夫というのは、毎年6%のリターン⇨インフレで2%持っていかれる⇨4%残るということだと思っている

この手の間違った説明は本当にあらゆるところで目にします。1番目の誤解にも共通してくる話ですが、6-9%のリターンとは長い期間で見た際の年間平均の利回りのことです。どういうことかというと、マーケットはある年に10%上がることもあれば、15%下がることもあるということです。4%ルールが試算しているのは、このような市場のアップダウンの中でも4%なら毎年引き出して使っても良いということなのです。

もちろん毎年毎年確実に6%以上の利回りを確定できる金融商品があるならば、それでも4%ルールは成り立つでしょうね。でもそれはまず個人投資家のパフォーマンスとしては有り得ないと考えた方がいいと思います。市場の平均を上回る成績を何年にも渡って残せる投資家は全体の1%にも満たないとも言われています。)高配当株なら毎年5%の配当を受け取れる!といったところで、株価自体が下がるようでは元も子もないですし、そもそも限られた銘柄だけにお金をつぎ込むというのもリスクを取り過ぎていると思います。                                                                                                      

誤解3 4%ルールに従っていれば資金が一生無くなることはない

これが本当ならいいのですが…(笑)
以前の記事で紹介したTrinity Studyで検証されているのは30年間の期間です。この研究で成功と定義されているのは、30年後の資産が0より上の場合です。つまり、30年間4%ずつ引き出して最後に1ドルだけが残っていたとしても成功とみなされているのです。これは65歳で引退して95歳まで資産がギリギリ残るというケースなら、平均余命等を考えると充分だと言えるでしょう。一生を終えるときに資産がピッタリ0円になっているのが究極的には1番損をしなかったという見方もできますからね。
しかし僕のようなFIREで30代半ばにはフルタイムの仕事を辞めようとしている者にとって、65歳の時点で一文無しになってしまっては非常に困ります。

とは言っても、そこまで悲観的になることも必要ないのかなと考えています。何故ならTrinity Studyの研究では、30年後に資産が元々の金額よりも増えている可能性すらあることがわかっているからです。過去の市場のデータから試算した中央値はもとの金額の8倍以上になっているとのことです。つまり、当初5000万円を投資資産として持ち、毎年そのうち4%相当分を使ったとしても、30年後には4億円(!)に増えていることになります。

実際Trinity Studyのフォローアップの研究では、より長い40年間や60年間のスパンで検証がなされ、4%ルールが依然としてかなり高い確率で成り立つことが確認されています。この詳しい顛末は別記事で書きますが、ここで言いたいことは4%はだいぶ保守的にみている数字であり、そこまで心配しなくていいということです。

この件に関してはもう少し踏み込んだ記事を書きましたのでご覧ください。30年以上の退職期間を想定した研究を紹介しています。4%ルールは現在でも成り立つのか?アーリーリタイアを本気で考える

フレキシブルに生きよう

大事なのは柔軟性を持つことです。もしアーリーリタイアを始めた直後にマーケットがこれまでにないほど落ち込んだなら、またいくらかお金を稼ぎに出ればいいと構えておけばいいのです。別にまた一日8時間週5日間のフルタイムの仕事をする必要は全く有りません。生活費の半分、いや30%でも生み出せるのなら、あなたのポートフォリオの寿命は格段に伸び、資産が尽きることなど心配しなくてよくなります。